【日本史の勉強で意識すること】「歴史の流れ」とは何かを考える【後編】

前編は「歴史の流れ」とは何かを考え、日本史の勉強では歴史の移り変わり(推移・変遷)を理解して「時期区分」をおさえることが重要であることを説明しました。

鈴木 和裕
鈴木 和裕

後編では「歴史の流れ」=推移・変遷を理解することが、入試問題で高得点をとるために必要であることを説明します

入試問題では、推移・変遷を理解していないと解けない問題、言い換えると、時期の判断が必要な問題が難問となっています。一問一答的な歴史用語の知識問題や因果関係の問題ではなく、時期判断の問題で日本史ができる受験生とできない受験生の差がつきます。

 

 

正答率の低い難問から「歴史の流れ」=推移・変遷を考える

少し古いセンター試験の問題ですが、時代・時期の特徴を理解して「時期区分」をおさえておくことの重要性がわかりやすいので、【例題】として採用します。推移・変遷を整理するためには「時期区分」をして各時期の特徴をとらえることが必要になります。同様の考え方が必要な類題は共通テストや私大入試でも出題されます。

【例題】
2006年 センター日本史B 本試験
第5問 問4 問題番号28

(前略)こののち明治維新によって激減した東京の人口も再び増加に向かい,都市としてますます繁栄する。だが,そこに住む庶民の暮らしは,必ずしも豊かなものではなかった。1890年代後半,東京の貧民街を調査した横山源之助は,拡大する社会的格差を記録し,「(d)人間の階級かくまで相違するものあるかを嘆ぜしむ」と述べた。28

問4 下線部(d)に関連して,1890年代の社会・経済に関して述べた次の文X~Zについて,その正誤の組合せとして正しいものを,以下の①~④のうちから一つ選べ。

X 困民党に結集した農民たちが,秩父事件を起こした。
Y 労働者の待遇改善を求めて,高野房太郎らが労働組合期成会を結成した。
Z 俸給生活者(サラリーマン)が大量に出現し,大衆文化の主要な担い手となった。

① X 正 Y 正 Z 誤
② X 正 Y 誤 Z 誤
③ X 誤 Y 正 Z 正
④ X 誤 Y 正 Z 誤

解答④

 

時期判断の文章正誤問題は難しい

この問題は正答率が約30%というセンター試験では超難問です。一見、大した問題ではありませんが、多くの受験生が間違えた差がつく問題の一つです。センター日本史Bで90〜100点の高得点を取りたい受験生は落とせない問題でした。

「1890年代の社会・経済」に関して述べた文章の正誤判定です。難問であった理由として考えられるのは、選択肢の内容はX・Y・Zともに正しく、時期の判断を求める問題だったからです。

選択肢の内容を考えても正誤の判断はできません。X・Y・Zの選択肢が「1890年代」の出来事かどうかを考えなければいけません。

鈴木 和裕

時期判断の問題は差がつきます

誤答として比較的多かったのが①です。ということは、「秩父事件」で引っかかった受験生が多かったということです。秩父事件が1884年であることを覚えていれば、すぐに正解は出せます。では、この問題をみて「西暦年の暗記は重要だ!」と考えますか?

 

「時期区分」からある時代・時期の特徴を考える

僕から言わせると、西暦年を考えるからできないのです。「時期区分」を考えることができれば、西暦年を知らなくても正解は出せます。以下、この問題の考え方を整理してみます。テクニック的に選択肢を絞ることは可能ですが、今回それはなしということにしておきます。

鈴木 和裕

西暦年から考えるのはダメ!

まず、「1890年代」とは、どのような時期か考えてみましょう。

「明治時代」であるというのは、リード文からもわかるでしょう。続いて、この時期=1890年代にあった大きな出来事(特徴的な出来事)は何でしょうか。どう考えても日清戦争でしょう。一方、国内の政治的な動向として、日清戦争前の1890年代前半は初期議会の時期です。さらに経済的な動向としては産業革命が進展した時期です。

「1890年代」はどのような時期かと考えたときに、以上のようなことがあった時期という特徴を理解しておく必要があります。

このようなことを考えるためには、普段の日本史学習で歴史の移り変わりを理解して「時期区分」を意識した知識の整理をしておく必要があります。突然思い浮かぶわけではありません。

 

「時期区分」をふまえて選択肢を考える

次に選択肢の出来事があった時期を考えてみましょう。

Zから考えてみます。「サラリーマン」「大衆文化」という語句から大正時代の社会・文化の特徴を示すことがわかります。1890年代は明治時代なので、時期違いで誤文だと判断できます。

次にYの労働組合期成会の結成が1897年だと西暦年を覚えていれば、すぐに正文とわかりますが、覚えていなかった場合、どうするかです。

1890年代は経済的には産業革命が進展した時期です。産業革命の進展によって賃金労働者が生まれ、その劣悪な労働環境から労働問題が発生したことがわかれば正文と推測することは可能でしょう。

リード文を丁寧に読めば、横山源之助が1890年代後半に社会的格差について言及していることがわかります。そのことも判断を助けてくれる材料の一つです。

そして、Xの秩父事件です。秩父事件は松方財政による農村不況が背景として発生します。松方財政は1880年代です。1880年代の経済の特徴を理解していれば正誤の判断ができます。

あるいは、秩父事件を自由民権運動の文脈で理解している人もいるでしょう。自由民権運動は「1880年代」までです。特に1890年代前半が初期議会の時期だとわかっていれば、自由民権運動との前後関係で判断できるはずです。

この【例題】は西暦年を覚えていれば、簡単に解けるでしょう。しかし、応用が効く知識ではありません。たまたま秩父事件の西暦年を覚えていたとしても、福島事件は?大阪事件は?大逆事件は?など西暦年を覚えていないものが出題されたらどうしますか?

推移・変遷を整理して「時期区分」をおさえていれば恐れる必要はありません。

 

「時期区分」をして推移・変遷を理解する

こうした時期判断の問題を考えるためには、「1880年代」「1890年代」…と「時期区分」をして、それぞれの時期の特徴を整理しておけばいいのです。

【例題】でポイントとなる明治時代の経済は以下のように整理できます。

1870年代  殖産興業
↓ 変化
1880年代  松方財政
↓ 変化
1890年代  産業革命
↓(変化していない…区切らない)
1900年代  産業革命

1870年代 → 1880年代 → 1890年代は変化しています。10年ごとに区切って経済的な特徴を示すことができます。しかし、1890年 → 1900年代は産業革命が続いています。あえて区切る必要はないということになります。

歴史用語や因果関係は「殖産興業」「松方財政」「産業革命」とリンクさせて覚えているはずなので、「時期区分」さえ理解できていれば、時期の判断で困ることはないはずです。

 

論述問題でも「時期区分」は必要

次に論述問題から「時期区分」を考えてみましょう。

【例題】
京都大学 前期 2009年 第4問(1)

8世紀から11世紀における国司制度の変遷を,郡司との関連をふまえて述べよ。
(200字以内)

解答例
8世紀,国司は中央から官人が派遣され,中央政府の監督下に国内を統治した。郡司には地方豪族が任じられ,国司の指揮下に徴税や文書作成などの実務をおこない,郡内を支配した。しかし,地方支配の動揺を背景に,9世紀末以降,国司の交替制度が整備され,国司の最上席者である受領に大きな権限と責任を負わせるようにした。そのため,地方支配における郡司の役割は低下した。11世紀後半になると,受領は現地に常駐しなくなった。(200字)

この問題は典型的な「推移・変遷」の問題です。他の記事(日本史論述問題の対策について)でも【例題】にしています。

この問題では、問われている主題([ 歴史事項 ])に関して、「時期区分」をしたうえで各時期の特徴(=前後の時期との違い)を説明しないといけません。これが「推移・変遷」を説明するということです。

主題である国司制度の変遷について「時期区分」をして「推移・変遷」を図式化してみます。ここでは「郡司との関連をふまえて」という条件は考えないことにします。そのほうが推移・変遷の考え方がわかりやすいでしょう。

【国司制度の変遷】

8世紀 律令制下
a 中央から貴族・官人を任国に派遣
b 太政官の指揮下に地方を統治
↓  変化
10世期 地方支配の乱れ
b 国司に一国支配を委任 → 受領(守)への権限集中
↓  変化
11世期後半
a 受領が任国に常駐しなくなる=制度の形骸化

大きく「8世紀」「10世紀」「11世期後半」の3つの時期に区分します。そしてa国司の任国への赴任、b国司の権限2つの項目について変化が説明できます。こうして並べてみると、国司制度について時期区分をして各時期の特徴を考えることで、推移・変遷を説明していることがわかるでしょう。

 

年代順配列問題で「時期区分」の考え方を身につける

時期区分」の考え方を身につけるためにはどうしたらいいでしょうか。授業をしっかりきいて、学習の際には常に意識することが重要なのは当然です。

しかし、インプットした内容はアウトプットしないとなかなか身につかないでしょう。前述ようなの論述問題が理想的ではありますが、多くの受験生は必要ないと思います。

そこで、センター試験で頻出であった年代順配列問題を利用するのです。【例題】をみてみましょう。

【例題】
2011年 センター日本史B 本試験
第2問 問6 問題番号12

下線部eに関連して,寺院と国家の関係に関して述べた次の文Ⅰ~Ⅲについて,古いものから年代順に正しく配列したものを,以下の①~⑥のうちから一つ選べ。12

Ⅰ 開発領主のなかに,国司の圧迫を逃れようとして有力寺院などに田地を寄進する者が現れるようになった。
Ⅱ 有力寺院が下級僧侶を僧兵に組織し,神木や神輿を押し立てて,自分たちの要求を通すため朝廷に強訴するようになった。
Ⅲ 有力寺院の初期荘園が,律令的支配の衰えとともに衰退していった。

① Ⅰ―Ⅱ―Ⅲ ② Ⅰ―Ⅲ―Ⅱ
③ Ⅱ―Ⅰ―Ⅲ ④ Ⅱ―Ⅲ―Ⅰ
⑤ Ⅲ―Ⅰ―Ⅱ ⑥ Ⅲ―Ⅱ―Ⅰ

解答⑤

 

このような形式の問題が「年代順配列問題」です。西暦年の暗記で攻略しようとする人がいます。実際に西暦年の暗記で解ける問題もありますが、上の例題はどうでしょうか。受験生が苦手とする荘園制に関連する問題です。

文章の内容を見ればわかるように、西暦年を当てはめるのは無理です。この問題を解くためには推移・変遷を整理して時期区分をする考え方が必要です

この設問は以下のように整理できます。

8世紀〜9世紀 奈良時代から平安初期
・初期荘園の形成 → 衰退…Ⅲ
ああ↓ 変化
10世紀以降 平安中期以降
・寄進地形荘園の形成…Ⅰ
ああ↓ 変化
11世期後半 平安末期
・僧兵の強訴…Ⅱ

※高校教科書を参考にした整理

選択肢のⅢ→Ⅰについては時期区分をしたうえで、「初期荘園」→「寄進地形荘園」という変化として整理できると思います。Ⅱの僧兵強訴は教科書では院政期=平安末期に出てきます。

この問題は西暦年では解けない問題でした。マーク式で「推移・変遷」を問うたのが年代順配列問題だと考えてもらえばいいでしょう。

私大でも出題されますが、センター試験が元祖です。センター試験の過去問(主に2006年〜2020年)から年代順配列問題だけをピックアップして多くの問題にあたってみてください。共通テスト対策にも有効です。

その際に西暦年で考えるのではなく、「時期区分」の考え方を思い出してください。Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの文章は、それぞれ「時期区分」=「いつ」の時期の出来事かを考えればいいのです。正しい考え方でくり返し演習をすることで、推移・変遷の考え方が身につくはずです。

 

さいごに

長い文章になりましたが、僕が日本史の理解で重要だと考える「時期区分」について、少しでもわかってもらえたでしょうか。

ちなみにこの記事は共通テスト対策を意識して書いたので、単なるセンター試験、論述問題の分析だと思わないでください。今回は日本史の理解の仕方について考えてみました。勉強する際の参考にしてください。