【京都大学の日本史】対策編 史料問題

鈴木 和裕
京大「合格点をとるための入試対策」「対策編 論述問題」の続きです

京大の出題で受験生が苦戦するのは、第4問の論述問題、第1問の史料問題でしょう。第2問の短文問題、第3問の長文問題には特別な攻略法はありません。今回は受験生が苦戦する難問のうち、史料問題の対策について考えましょう。

京大の史料問題の特徴

入試問題の傾向でもまとめましたが、基本的にA・B・Cの3つ史料が出題され、空欄補充や下線部問題を中心に20問の記述問題が出題されます。

出題される史料は時代や分野の偏りは特にありません。グラフや表などは出題されず、基本的に文字史料のみです。一度だけ、原始時代の考古資料が図版で出たことがありますが、出題として定着はしていません。

何よりも重要なポイントは、主に初見史料が出題されることです。教科書に掲載されている史料が出題されることはまずありません。また、市販の高校教材用の史料集や史料問題集に掲載されている問題が出題されることもほとんどありません。

京大の史料問題は、受験生が試験会場で問題冊子を開いて、初めて見る史料問題を出題するということです。そういう意味では純粋な史料の読解能力を試している問題です。近年は設問を利用して語句の知識を一問一答的に問うものが多くなり、史料の読解能力が問われていると思われる問題は非常に少なくなり、取り組みやすいといえます。

しかし、一般的には史料問題を苦手としている受験生は多く、それなりに対策はしておかなければいけません。

史料問題の対策をどうするか

鈴木 和裕

まず、出題のパターンを見てみましょう

【例題】
2020年 京都大学 第1問 B

B
ヨリ後,平氏世ヲミダリテ(注)二十六年,(f)文治ノ初,頼朝,権ヲモハラニセシ(注)ヨリ父子アイツギテ三十七年,承久ニ義時,世ヲトリオコナイシヨリ百十三年,スベテ百七十余年ノアイダ,オオヤケノ世ヲ一ツニシラセ給コトタエニシニ,此ノ(g)天皇ノ御代ニ,掌ヲカエスヨリモヤスク一統シ給ヌルコト,宗廟(注)ノ御ハカライモ時節アリケリト,天下コゾリテゾ仰ギ奉リケル。
(中略)
ソモソモ,(h)彼ノ高氏御方ニマイリシ,ソノ功ハ誠ニシカルベシ。スズロニ寵幸アリテ,抽賞(注)セラレシカバ,(中略)程ナク参議従二位マデノボリヌ。三カ国ノ吏務・守護オヨビ,アマタノ郡庄ヲ給ル。弟ハ,左馬頭ニ任ジ,従四位ニ除ス。昔,頼朝タメシナキ勲功アリシカド,高位高官ニノボルコトハ乱政ナリ。ハタシテ子孫モハヤクタエヌルハ,高官ノイタス所カトゾ申伝タル。(i)高氏等ハ頼朝・実朝ガ時ニ,親族ナドトテ優恕スル(注)コトモナシ。(中略)サシタル大功モナクテ,カクヤハ抽賞セラルベキトモアヤシミ申ス輩モアリケルトゾ。

(注)
「ミダリテ」は,「乱して」の意味。
「権ヲモハラニセシ」は,「権力をほしいままにした」の意味。
「宗廟」は,天皇家の先祖のこと。
「抽賞」は,恩賞を与えること。
「優恕スル」は,優遇すること。


(7) に当てはまる元号を記せ。
(8) 下線部(f)に関して,頼朝の軍勢が平氏を滅ぼして源平騒乱を終結させた合戦の名称を記せ。
(9) 下線部(g)の「天皇」とは誰か。
(10)  下線部(h)に関して,高氏は,彼に出陣を命じた得宗に背いて,天皇の「御方」(味方)に参入した。この得宗とは誰か。
(11) には,高氏とともに二頭政治を行ったことで知られる人物の名前が入る。この人物が滅亡した,幕府の内紛は何か。
(12) 下線部(i)に「高氏等」とあるのは,高氏らの祖先を意味する。彼らの先祖である義兼は,頼朝が挙兵した直後に設置した侍所において,頼朝と主従関係を結んだ。義兼は幕府においてどのような立場にあったか。
(13) この史料の著者は,当時の天皇のどのような行為を批判しているのか。簡潔に記せ。

【解答例】
(7)平治 (8)壇の浦の戦い
(9)後醍醐天皇 (10)北条高時
(11)観応の擾乱 (12)御家人
(13)大した功績のないものに多くの恩賞を与えたこと。

この史料は2020年の出題で、出典は北畠親房の『神皇正統記』です。空欄補充、下線部設問、そして(13)には短文記述問題もあります。

設問のうち、(8)(10)(11)(12)は一問一答的な知識で設問をみれば解けるでしょう。(7)(9)(13)は史料の内容を理解しないと解けない問題になっています。

以下、この【例題】を参考にして、史料問題の考え方や学習方法について考えてみましょう。

史料問題の考え方

まず、史料問題を解く際、前提としたいのは「一字一句すべての内容を把握できるわけではない」ということです。史料を読んでも部分的にわかるところとわからないところがあり、何となく全体像が把握できればいいといったところです。

そのなかで、「いつの時期のことを記した史料か」というのを限定し「どのような歴史事項について記しているのか」がわかればよしです。仮にわからなくても解ける問題はあるはずなので、対処の仕方はあります。

最初に出典の記載があるかどうかをみてみましょう。この【例題】には出典がありません。ちなみに2020年度、第1問のAパートの問題は『日本三代実録』と「元慶4年(880)」という記事の元号・西暦年が出典として明記されており、時期が把握できます。

次に史料の文中から知っている語句を探しましょう。特に人物や元号は史料を限定するいいヒントになります。【例題】では「頼朝」「義時」「高氏」といった人物の名前がみられます。「頼朝」=源頼朝、「義時」=北条義時はわかるでしょう。「高氏」は足利尊氏のことだとわかるでしょうか。これで史料内容を理解する大きなヒントができたはずです。

そして設問を見ていきましょう。設問文にも多くのヒントが含まれています。設問をみれば(8)(10)(11)(12)の問題は解けるでしょう。比較的単純な知識問題です。以上が初見史料問題にあたる時の「目線の走らせ方」です。もう一度整理しておきます。

①出典を確認する→無ければ無いでよい
②とりあえず、史料文中から知っている語句(人物・年号など)を確認
③設問に目を通す→解ける問題は解く!

この過程で史料に記されている時期、史料に記されている歴史事項が限定できればよしです。

そしてこれで解答が出なかった問題が、史料の内容がわからないと解けない問題、つまり史料読解問題だということです。そこで第4の作業です。

④史料をじっくり読んで設問の解答を考える

基本的に空欄補充問題は史料を読まないと解答できません。(7)のがそうです。空欄は足利直義ですが、(11)の設問では関わった観応の擾乱が問われており、しかも設問のヒントで一問一答的に解答可能です。

は設問で元号が入ることがわかっていて、「平治」が解答になります。「ヨリ後,平氏世ヲミダリテ二十六年」という記述と、下線部(f)に関する(8)の設問の解答である1185年の壇の浦の戦いがヒントになります。平清盛が出世する契機となった1159年の平治の乱が想起できればいいでしょう。(9)下線部(g)の天皇は後醍醐天皇です。

「平氏…頼朝…義時…スベテ百七十余年ノアイダ,オオヤケノ世ヲ一ツニシラセ給コトタエニシニ」,「此ノ天皇ノ御代ニ,掌ヲカエスヨリモヤスク一統シ給ヌルコト」そこから鎌倉幕府の滅亡→建武の新政という展開を想起すればよいでしょう。そして、(13)は短文記述問題です。第1問の史料問題や第3問の長文問題で1、2問出題されます。

この問題は史料の読解が必要です。詳細な解説はしませんが、「サシタル大功モナクテ,カクヤハ抽賞セラルベキトモアヤシミ申ス輩モアリケルトゾ」という最後の部分を簡潔にまとめれば解答になります。初見史料の問題を解く時は、この手順を参考にしてください。

過去問を解く

史料問題の対策として、一般的に史料集を読む、史料問題集を解くというのがあると思います。全面否定するわけではありませんが、積極的にはススメません。

京大では初見史料が出題されます。史料集や史料問題集を解いたところで同じ史料は出ません。要は史料を覚えても仕方がないのです。とはいっても、史料に慣れておく必要はあるので、まとまった時間を取る必要はありませんが、教科書を読んだ時などに意識的に史料に目を通すようにしておきましょう。共通テスト対策にもなります。

京大では、史料そのものが読める、あるいは史料を覚えているというよりは、正しい歴史的知識を前提に史料や設問から情報を得て解答を導き出す能力を求めています。そのために頻出史料を掲載した史料問題集で空欄補充や下線部の意味などを覚えてもあまり意味はありません。むしろ、初見史料をみてどのように情報を得て解答を導き出すかという方法論が重要です。

そのための学習の素材は京大の過去問しかありません。京大には京大の出題の癖があります。同じ史料が出るわけではないので、過去問を解きながら上記の解答の手順をしっかり訓練してください。史料問題には出題者が考えた解答の道筋が必ずあります。出典、史料中の記事、設問文とこれらのヒントから解答を導き出す道筋です。過去問でその方法を身につけましょう。特に史料の読解を要する問題については史料の読み方を考えましょう。

解答がわからず間違った問題については、解答を見てからもう一度、史料や設問をじっくりみてみましょう。「どこにヒントがあったのか」「自分はどこを見落としたのか」それとも「知らない内容だったのか」など、問題を解き、解答をチェックしてからが本番です。出題者の考えた道筋を探しましょう。

過去問を使って訓練をすることで史料問題も必ず解けるようになります。その過程で知識の定着をはかってください。

さいごに

史料問題集は不要といいましたが、史料問題が特に苦手だという人は、史料問題集を1冊やって史料に慣れてから過去問をやるのもいいと思います。学習方法には個人差があって一つではありません。

京大の史料問題は私大型の問題に見えますが、私大の問題より難しいです。この記事を参考にして史料問題の対策も早めに進めてください。必ず高得点が取れるようになります。