2021年度一橋大学、日本史論述問題の解答例

2021年度の解答例をアップします。受験生は勉強の参考に、先生方は指導の参考にしてください。

今年度も近年の一橋大の傾向に沿った問題だったと思います。例年通りの感想ですが、やはり過去問をしっかりやりながら、教科書を中心に関連事項を整理していくというのが対策の王道です。

教えていた受験生に高3・高卒の2年間で、「『一橋大の日本史20カ年』(教学社)を3周した」という人もいました。再現答案を送ってくれましたが、いい答案を書いていました。過去問演習は裏切りません!

2021年 一橋大 論述問題の解答例

第1問

1調・庸。調は地方の特産物,庸は都での労役の代わりに一定量の布を中央政府に納める税であった。計帳に登録された成人男性を中心に課され,国司の指揮下に郡司が徴税し,運脚を徴発して都に輸送した。2田堵や国司の子孫などのうち,一定の領域を開発するものが現れ,開発領主と呼ばれるようになった。受領は公領を郡・郷・保などに再編成し,開発領主を郡司・郷司・保司に任命して徴税を請け負わせた。権門勢家による立荘が進むと,開発領主のなかには,荘官として現地の支配を行う者もいた。3京都を中心に高利貸業者を営む土倉・酒屋から徴収した営業税である土倉役・酒屋役。交通の要所に設けた関所や港の通行税である関銭・津料,田畑や屋敷地の面積に応じて課した段銭・棟別銭などを税として徴収した。4分地制限令。百姓が田畑を相続する際の分割相続を制限した。それにより年貢を負担する本百姓の没落を防ぎ,零細な農業経営の安定をはかった。(397字)

 

第2問

1新政府が徳川家を江戸から駿府に移し,旧幕臣のなかにはそれに従うものもいた。また参勤交代が行われなくなり,大名の家臣が江戸から帰国するなど武士人口が減少した。2横山源之助。日本之下層社会。3第一次世界大戦を背景とする経済発達により,サラリーマンなど新中間層が大量に出現する一方,工場で働く男性労働者が急速に増加した。こうした人口増加を背景に都市計画が進み,都市郊外には新中間層向けの文化住宅が建てられ,鉄道が整備されたことによって郊外から都心部へ通勤する生活へと変化していった。4戦争下に成人男子が徴兵され,空襲による大量の死者が出たうえ,空襲を避けるために学童疎開や縁故疎開が行われるなど人口は急減した。しかし,太平洋戦争終結後,徴集された兵士の復員や海外に在住日本人の引揚げが進み,疎開先から民間人が戻ってきた。さらに戦後のベビーブーム,経済復興による労働者の流入などにより東京の人口が増加した。 (400字)

 

第3問

1①15②新婦人協会③治安警察法④日本社会党。2当時は法的・社会的な男性優位のもと,女性の活動を家庭内に限り,女性が良妻賢母として生きることを強いていた。それに反発して女性の主体的な活動により,家庭の束縛から積極的に脱する女性をめざしたのが「新しい女」であった。3GHQは,太平洋戦争前の日本では労働者の無権利状態があり,それが労働者の低賃金を持続させ,国内市場が狭い状態を継続することにつながり,日本企業の海外進出を不可避とさせて軍隊による侵略を招いたと認識していた。そのため,労働者の団結権・団体交渉権・争議権を認め,労働者の低賃金構造にもとづく国内市場の狭さを解消しようとした。4男女雇用機会均等法。「国連婦人の10年」の過程において国連で採択された女性差別撤廃条約に日本は調印していた。この条約を批准するにあたってさまざまな措置を取る必要に迫られ,そのための国内法整備の中心として制定された。(397字)