共通テスト対策 2020年度版~問題の特徴 後編~

それでは前回の続きで、共通テストの特徴の後編です。前編に続いて、まだまだ重要な内容が盛り沢山です。

センター試験には見られない新しいタイプの問題

次の問題は、センター試験では出題されていない新しいタイプです。特に問い方に着目してください。では問題を見てみましょう。

  • 2018年度 試行調査 日本史B
    第3問 問4 問題番号17

下線部ⓐの時代のうち、15世紀についてX・Yのような評価もある。それぞれの評価を根拠付ける情報をXはa・b,Yはc・dから選ぶ場合,評価と根拠の組合せとして最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。

評価
X この時代は「政治的に不安定な時代」である。
Y この時代は「民衆が成長した発展の時代」である。

根拠
a 並立した二つの朝廷を支持する勢力が武力抗争し,また,その一方の内紛などもあって内乱は長期化した。
b 全国の大名を二分した大乱は終結したが,地方には新たな政治権力も生まれ,地域的な紛争は続いた。
c 村では,共同の農作業や祭礼を通して構成員同士が結び付いていたが,戦乱に対する自衛で内部の結合を強くしていった。
d 村では,指導者が多くの書籍を収集して人々に活用させ,儒学を中心とする高度な教育を進めていった。

① X-a Y-c  ② X-a Y-d
③ X-b Y-c  ④ X-b Y-d

解答③

 

評価と根拠」の組合せを解答として選ぶ問題です。共通テスト全体を見ると、単純な暗記知識ではなく、歴史的な理解を問う姿勢が随所に見られます。そのなかで「歴史の見方」は一つではない、ということを理解させようとする問題が散見されます。この「評価と根拠」を考えさせる問題もその一つと言えます。

従来通り、覚えておかなければいけない知識はありますが、それだけではなく、歴史的な理解をマーク形式で問うというのが共通テストだと考えておきましょう。国公立二次の論述問題に近い発想の仕方だとも言えます。

 

「資料問題」より「時期判断」の問題が難問となる

資料問題が多いことは特徴としてすでにあげました。おそらく、資料問題に対して嫌な感じがした受験生は多いでしょう。しかし、資料問題は設問の指示をしっかり読めば、必ずできます。要は「コツ」をつかめば、歴史的な知識が身についている受験生にとって難問ではないのです。

おそらく、センター試験に引き続き、受験生が苦戦するのは「時期判断」の問題です。「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の3文を古いものから年代順に並べ替える「年代順配列問題」はできない受験生が多く、70点を超えるための壁となっていました。では、以下の問題を見てみましょう。

  • 2018年度 試行調査 日本史B
    第3問 問2 問題番号14

歴史には様々な見方がある。下線部ⓑの時代には「外からの波」が少なかったという見方に対する反論として成り立つものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① この時代には,海外渡航許可書を持った貿易船が東南アジアに行っており,その交流を通して「外からの波」は少なくなかった。
② この時代には,中国に公式の使節が派遣され,先進的な政治制度や文化などがもたらされており,「外からの波」は少なくなかった。
③ この時代には,長崎の出島の商館を窓口にして,ヨーロッパの文物を受け入れており,「外からの波」は少なくなかった。
④ この時代には,中国との正式な国交はなかったが,僧侶や商人の往来を通して「外からの波」は少なくなかった。

※下線部ⓑ=10〜14世紀

解答④

 

この問題は、共通テストの特徴を様々な形で示しています。まず、すべての選択肢は「正文」です。設問に対する問いに的確に答えなければいけません。次に、選択肢のなかに歴史用語がほとんど含まれていません。とはいっても、歴史用語を知らないと解答はできません。そして、センター試験でも難問であった「時期判断」が求められています。

下線部ⓑの「10〜14世紀」がどのような時代か、すぐにわかりますか?それがわからない受験生はこの問題が解けません。10世紀は平安時代中期、摂関政治が形成されたころ、14世紀は南北朝の内乱期です。ということは、主に平安後期から鎌倉時代ごろの対外関係について問うていると考えればいいのです。

①は朱印船貿易の説明で江戸時代初期です。②は遣唐使を想起すればいいでしょう。奈良時代ですね。③は長崎の出島から江戸時代だとわかります。④は日宋貿易や日元貿易が想起できるので、これが正解です。

この問題は、選択肢の内容を具体的な歴史事項に置き換えたうえで、時期の判断をする問題です。正答率が低いことが予想されます。十分に日本史を学習する際に意識しておきたいところです。

 

センター試験と同じタイプの問題

共通テストでは新しいタイプの問題ばかりなのでしょうか。そうではありません。実際に試行調査では、センター試験と同じような文章正誤問題も出題されています。以下の問題を見てください。

  • 2018年度 試行調査 日本史B
    第4問 問2 問題番号19

俳句も社会の世相を語る資料である。信濃国の百姓で,文化・文政期に活躍した俳諧師の小林一茶は,数多くの俳句を残している。次の問い⑴・⑵に答えよ。

⑴ 化政文化に関して述べた文として誤っているものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 十返舎一九の著した滑稽本が広く読まれた。
② 富士山を題材にした葛飾北斎の浮世絵が人気を博した。
③ 近松門左衛門が人形浄瑠璃の脚本を書いた。
④ 曲亭(滝沢)馬琴が勧善懲悪を盛り込んだ読本を執筆した。

解答③

 

この問題はセンター試験でも出題されていた「誤っているもの」というタイプの文章正誤問題です。時期の判断を求める問題なので、受験生にとってやや難問ではありますが、共通テストでもセンター試験と同様の問題が出題されると思われます。割合の問題です。試行調査はかなり気合いの入った問題が多かったようですが、実際はセンター試験で出題されていたような問題も出題されると思います。

どのくらいの割合か、という無責任な予想はやめておきます。ただ、センター試験の過去問も学習するうえでは使いようです。共通テストの過去問はないのですから。

 

さいごに

今回は共通テストの特徴について考えてみました。これを読んだうえで、ある程度、通史の学習が進んでいる受験生は、早い段階で2017年度、2018年度の試行調査の問題を解いてみてください。学習するにあたって、どのような問題が出題されるか、どのような問題で苦戦するかを知っておくことは重要です。

次回は、共通テストの特徴をふまえて、勉強方法について考えてみたいと思います。